跡見学園大学サスティナブルビジネス研究会
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近江八幡市調査資料

滋賀県近江八幡市は戦国時代から続く八幡堀の再生や琵琶湖畔の水郷地帯の景観を保存・活用したまちづくりの事例で全国的に有名な都市です。また、ASBIが調査を行った米国グランドラピッツ市と姉妹都市を結ぶ自治体でもあります。ASBIでは環境を守り、活かしたまちづくりの現状について2007年12月26・27日に訪問調査を行いました。以下では、その概略を紹介します。
1.八幡堀の再生と旧市街地のまちづくり
近江八幡市のまちづくりの中核を担っているハートランド財団理事にインタビューすると共に旧市街地の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)指定による建築物群や近江八幡市に在所する近江兄弟社を設立したW.ヴォーリス氏による建築群など、旧市街地の魅力をまち歩きの中で紹介いただいた。
写真1.市民のまちづくり活動が原動力になって復活した八幡掘。時代劇の撮影で数多く利用されている。 写真2.ハートランド財団がある白雲館。小学校として創建された際(1877年)住民、近江八幡商人が多額の寄付を行った。
写真3.旧市街地にある伝統的建物群 写真4.旧市街地に残るヴォーリス建築

近江八幡市は戦国時代の豊臣秀次による都市開発を出発点に生まれた街であり、その後、近江商人の中核となった八幡商人の中心に江戸期まで「町衆の自治」により街が切り盛りされてきた。今日も人口7万人の都市にあって、約180のボランティア団体、その中でも約50程度の団体がまちづくり活動に取り組んでいる。当時の町割りや地名というものだけではなく、まちづくり団体の活発さに「町衆の自治」の伝統が見られるのではないか、とのことであった。
現在のまちづくり活動の出発点は約30年前の八幡堀の再生活動だった。水上交通から陸上交通へ移行した時代にあって、琵琶湖から物流ルートあった八幡堀は土で埋まり、雑草が生えるなど、ほぼ死んだ状態であった。そこへ埋め立て・道路化する計画が持ち上がる。
このとき、「堀を埋めたときから後悔が始まる」と、後に近江八幡市市長となる川端五兵衛氏ら青年会議所(JC)が中心となって市民が清掃活動を行うなど、市民発の修景活動が始まる。このときに結成され、運動の中心となった「八幡掘を守る会」は現在でも活動が継続されている。
その後、県・国からの数次に渡る補助事業での公共事業が行われ、また、堀端の沿道では市民の寄付により敷石が敷かれる(敷石の裏には寄付者の氏名が掘り込まれている)などもあり、現在の大変風情のある姿を取り戻している。
こうした八幡堀再生の運動を担ったメンバーの「肝煎り」で作られたのが、ハートランド財団である。市民から寄付と市からの出捐と合わせて設立された、この財団は近江八幡市のまちづくりの中間支援組織として機能している。
近江八幡市は京都・大坂の通勤圏として駅前を中心に宅地開発が進められた街でもあった。駅前の開発のためのあおりで受ける形で旧市街地の商店街の活力は低下してしまっている現状がある。
写真5.旧市街地の商店街 写真6.住民参加によるデザイン協議で生まれた公民館

一方で、新興住宅地へ転入してきた新住民層の団塊世代が近年ではまちづくりの活動に多く参加するようになってきている。特に行政の福祉部局の発意で始まった定年退職者向け料理教室で集ったシニア層が年次別の同期会を作り、会単位として活動するだけではなく、里山保全のボランティアグループの活動に参加することや、会が集った「おやじ連」としての活動を行うなど、まちづくりの大きな推進力になりつつある。
2.小舟木エコ村
近江八幡市の市街地と田園エリアの結節点にある小船木地区の15haの区画に株式会社「地球の芽」による環境を活かした新しい住宅団地「小舟木エコ村」の開発が行われている。2008年秋の街開きに向けて既に宅地販売が開始されており、完成時には1200人が暮らす新しい街が生まれる予定である。
「小舟木エコ村」は滋賀県立大学や地元経済人によるNPO法人エコ村ネットワーキング
によるコンセプトメイキングの下、地元土建業者である秋村組を母体に2003年に設立された「地球の芽」を事業会社として事業が進められている。
ここでは、複数の大手ハウスメーカーとのビジネスパートナーシップや地元建材を活用する工務店との連携により住宅が建てられ、おおむね1区画平均3400〜3500万円(土地・建物)が価格帯となっている。
一定の区画内では特定のメーカーによる住宅が集中的に建てられ、「地球の芽」が販売する区画内では地元工務店を紹介し、地元建材による住宅が建てられることを通じて環境配慮型住宅のショールーム的な役割も果たされる見込みである。
各区画には家庭菜園がされる点や、意匠等も近江八幡市の景観計画に基づくガイドラインが設けられるなどの取り組みがなされている。主な購買層は近江八幡市内からの移転や滋賀県内からの移住を予定する子育て中の30代、そして定年退職後のセカンドライフを送ろうと考えるシニア世代となっている。
ヒアリングでは、こうした実験的な取り組み当たっての各種の開発規制との調整など、環境配慮型の開発をめぐる既存の法制度上の諸問題についても指摘があった。
3.油藤商事によるガソリンスタンドのエコロジーテーション化の試み
明治時代から続く油藤商事ではガソリンスタンドのエコロジーテーション化が行われている。同社 4代目にインタビューを行った。
同社では使用済みてんぷら油(賞味期限切れの未使用てんぷら油を含む)から生成されたバイオ生成燃料を軽油に5%配合した「バイオディーゼル」を約 10年前から販売している。加えて、ユーザーが給油のついでに使用済みてんぷら油以外にビン・カン、ペットボトル、使用済み蛍光灯、電池等をリサイクルボックスへ回収できるように様々な設備が設けられている。
バイオ生成燃料を5%配合とする理由は「揮発油等の品質の確保等に関する法律」によりバイオ燃料は 100%で利用するか、軽油に配合する場合には 5%以下の混合でしか認められていないこと、そしてエンジンメーカーからバイオ燃料 100%での稼動は性能への懸念が寄せられていることなどが理由である。
同社では 6000リットル(月)の回収・清算・販売を行っているが、利用の要望に供給が追いつかない状態にある。最大のネックは回収量の限界にある。その背景には、飲食店からの廃油は肥料・飼料・塗料・ボイラー燃料用途に回収業者によるリサイクルルートが整備されているため、生産には家庭系からのものを集める必要があるということにある。
そこで、油藤商事では「バイオディーゼル」利用希望の事業者に原料となる使用済みてんぷら油の回収自体の協力を求めている。現在では、例えば、運送会社が配達のついでに各家庭から回収し、その分で配送車を走らすなどの取り組みが行われるようになっている。
家庭から回収するとなると、どうしても拠点は分散型とならざるを得ない。油藤商事でも同社が回収する場合には半径 10キロ圏内を回収範囲としている。見方を変えれば、ガソリンスタンドという全国に約 4600箇所ある分散型拠点が、個々の地域内で回収・再利用を通じて再生エネルギーを確保するという新しいモデルを発信するものでもある。
こうした活動へは全国からの取材・見学が集まり、その対応に事務所を改装するほどとなっている。なお、上記で見た株式会社「地球の芽」社長と油藤商事4代目とは高校の同級生とのことであり、近江八幡地区の人的基盤の厚さも感じさせる。
写真7.油藤商事ガソリンスタンドのてんぷら油回収機。このほかにも様々な資源の回収ボックスが設定されている。
写真8.軽油に回収したてんぷら油から生成したバイオ燃料を5%配合したバイオディーゼル給油機。